
【この記事の結論】
・「電験三種→電工2種」の順番は、戦略ではなく「勢い」の結果。
・電験持ちでも、電工の「技能試験」は別次元の難しさがある。
・40代現場職が技能練習で一番気をつけるべきは「手のコンディション管理」。
「電験三種を持っていれば、電工2種なんて楽勝でしょ?」
世間ではよくそう言われます。確かに学科試験については、その通りかもしれません。
しかし、40代・高卒・現場職の私が実際にこの順番で受験して感じたのは、「頭でわかることと、手が動くことは、全く別の才能だ」という痛烈な事実でした。
この記事では、2025年に「電験三種」と「第二種電気工事士(以下、電工2種)」を連続で取得した私の、少し変わった合格体験談をお話しします。
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ここでは、油まみれの現場で働きながら、会社に内緒で資格を積み上げた一人の男のリアルを書き残します。
1. なぜ電工2種ではなく、先に「電験三種」を受けたのか
「なぜ、入門資格の電工2種を飛ばして電験三種を先に受けたんですか?」
よく聞かれますが、答えは拍子抜けするほどシンプルです。
「たまたま、その時申し込めるのが電験三種だったから」です。
2024年の11月、私は業務命令で受験した「公害防止管理者(水質2種)」に合格しました。
40代にして初めて「勉強すれば結果が出る」という成功体験を味わい、勢いそのままに「次は電気をやってみたい」と考えたんです。
最初は、当然のように電工2種を調べました。
しかし、次の試験は半年も先。対して、電験三種はちょうど申込期間の真っ最中でした。
実は20代の頃、電験三種の参考書を買って数ページで挫折した苦い経験があります。
「どうせ無理だろうな」と思いつつも、公害防止合格の勢いだけで、吸い込まれるように受験料を振り込みました。
もし電験が不合格でも電工2種は受けていましたが、この「タイミングと勢い」こそが、私の運命を決めました。
2. 学科試験(CBT)のリアル:電験持ちの優位性と「捨てた」分野
電工2種の学科試験は、電験三種でも経験したCBT方式を選びました。
会場が家から近く、自分の都合で日時を選べるCBTは、突発的な残業がある現場職にとって最強の味方です。
電験三種取得者から見た学科の難易度
正直に告白します。学科は、かなり楽でした。
合格点が6割ということもあり、電験三種の「理論」と「法規」を潜り抜けてきた身からすれば、計算問題や法令関係は、ほぼ無勉でも対応可能です。
改めてテキストを1冊買いはしましたが、勉強時間は合計10時間、期間にして1週間程度です。
複線図は「捨て問」にするという決断
ただし、一つだけ想定外がありました。「複線図」です。
電験の回路図とはルールが違い、独特の書き方が求められます。
「これ、真面目に覚える必要があるか?」
私は冷静に判断しました。他の分野で8割以上取れる確信があったため、複線図はあえて捨てました。
満点を目指す必要はありません。現場の仕事と同じで、限られたリソースをどこに投下するか。それが40代の戦い方です。
3. 技能試験を初めて見たときの衝撃「これは別物だ」
学科を余裕で通過し、いよいよ「技能試験(実技)」の練習に入ったとき、私は自分の考えが甘かったことを思い知らされました。
「え、これ、意外と難しそうだな……」
理論中心の電験三種では、ペンチを握ることも、電線を剥くこともありません。
「三相3線式の仕組み」は説明できても、「VVRケーブルのシースを綺麗に剥く」ことはできない。電験の知識が、技能試験では全く役に立たないんです。
理論(頭)と実作業(手)は、完全に別物。
ここからは、一人の「見習い工」に戻ったつもりで練習を始めました。
4. 技能練習の2週間:YouTubeとテキストの反復
練習期間は2週間と設定しました。
1日に2〜3課題。平日の夜、家族に応援されながら練習する日々です。
使った教材は以下の2つだけです。
- 市販のテキスト1冊
- YouTubeの解説動画
動画でプロの手つきを見て、自分の不器用さに絶望し、また動画を見る。
40代の乾いた指先には、電線の感触が思いのほか厳しく響きました。
5. 【大失敗】素手での練習が招いた、仕事への支障
ここで、これから受験する皆さんに一番伝えたい失敗談があります。
私は技能練習を、ずっと「素手」で行っていました。
仕事でも細かい作業は素手派ですし、手袋をすると感覚が鈍る気がしたからです。
しかし、これが大きな間違いでした。
1日1課題なら問題ありませんが、2〜3課題と続けるうちに、指先に怪我が増え、痛みで力が入らなくなりました。
さらにきつかったのは、本業(製造現場)への影響です。
技能練習では「握る」動作が多用されます。
- ストリッパーでの芯線剥き
- 圧着工具でのリングスリーブ圧着
- ペンチでの切断
練習で握力を使い果たすと、翌日の仕事で工具を握るのが本当に辛い。
「仕事中に工具を握りたくない」なんて、製造業の人間としては致命的です。
40代の回復力を過信してはいけません。「できれば手袋をしたほうがいい」。これは経験者からの心からのアドバイスです。
6. 試験当日の風景:最後に教室を出て気づいたこと
技能試験当日。私はこれ以上ないほど慎重に作業を進めました。
「完璧さ」よりも「欠陥を作らないこと」だけを意識し、何度も見直しを行いました。
私はその教室で最後に退出する受験者でした。
片付けをしながら他の受験者の机をそっと眺めると、驚くべき光景が目に飛び込んできました。
「未完成の作品が、意外と多い……」
電線の束を抱えたまま、タイムアップを迎えたであろう形跡がいくつもありました。
この時、確信しました。技能試験で求められているのは、芸術的な配線ではありません。
「時間内に、確実に、動くものを作る」
その一点に尽きるということを。
7. 電工2種を取って、自分の中で何が変わったか
合格後、私は会社に取得の事実を伝えていません。
自費、独学、そして内緒。だから給料も役職も1円も変わっていません。
でも、自分の中の景色は劇的に変わりました。
現場で電気トラブルが起きたとき、以前は「電気屋さんが来るまで待つしかない」と思っていました。
今は違います。図面を見て、盤を開け、何が起きているのかを自分の頭で理解できる。
「電験三種で得た知識」と「電工2種で得た実技の感覚」。
この両輪が揃ったことで、現場技術者としての自信が、これまでとは比較にならないほど深まりました。
8. これから「電験→電工」を目指す人へ伝えたいこと
もしあなたが、「電験三種を取ったから、次は電工2種でも取っておくか」と、おまけのような感覚で考えているなら、少しだけ意識を切り替えてください。
電工2種は、電験の下位資格ではありません。「全く別の性質を持つ、自立したプロの資格」です。
最後に、現場の先輩としてアドバイスを贈ります。
40代現場職のための技能試験対策
・知識よりも「手と体のコンディション」を優先せよ。
・技能練習は早めに始め、手を守るために手袋の着用を検討せよ。
・仕事に支障が出ないよう、握力の配分を考えよ。
高卒・現場職。頭も体も、若い頃のようには動きません。
でも、「勢い」と「正しい準備」さえあれば、電験も電工も、必ずあなたの手の中に収まります。
次は、あなたの合格体験談を聞けることを楽しみにしています。
